この記事は、以下のような疑問がある方にお勧めです。
・フリーランス特許翻訳者はいくら稼げる?
・特許翻訳の単価、月収、年収は?
・求人への応募資格(必須スキル)は?
・未経験でも応募できる?
日本翻訳連盟が目安となる各分野での翻訳料金(下記表参照)を開示しています。これは発注者が翻訳会社に支払う金額で、フリーランスの翻訳者に支払われる金額ではない点、注意しましょう。
※分野によって料金は多少異なります。
【表】翻訳料金(発注価格)日本翻訳連盟HPより
この価格から、翻訳会社のマージンを引いた分が翻訳者に支払われます。
では、翻訳者へ支払われる金額はいくらでしょうか?
今回は、特許翻訳について、フリーランス特許翻訳者の求人をもとに調査し、翻訳単価を表にまとめました。
結論、求人の平均単価は、英訳で10円/ワード、和訳で6円/文字でした。
単価でいうと15~25円は翻訳会社のマージンですね。
翻訳者以外の職種(チェッカー、機械翻訳のポストエディッター)の単価や、未経験者が応募可能な求人割合など詳細をご紹介します。
翻訳者に支払われる単価の調査方法
翻訳者ネットワーク「アメリア」で募集していた求人をもとに調査しました。
「アメリア」は、翻訳の専門校フェロー・アカデミーを母体として1985年誕生した翻訳者のネットワークで、翻訳求人数は年間1,500件以上あります。未経験でも応募可能な求人割合が多いのが強みとうたっている求人サイトです。
2023年12月に下記条件で検索し、20件の求人がヒットしました。
職種について補足ですが、チェッカーは、翻訳者が翻訳した文書をチェックする人です。翻訳者よりも単価が安く未経験可の求人もあるのが特徴です。
ポストエディターは、機械翻訳された文書を修正する人です。翻訳者とチェッカーの間ぐらいの単価で、特許翻訳では案件数が増えてきています。
特許翻訳の単価
平均単価は、翻訳者は英訳10円/ワード、和訳6円/文字、チェッカーは英訳・和訳ともに2円/ワード・文字、ポストエディターは、英訳6円/ワード、和訳は4円/文字でした。
【表】翻訳単価(平均)
上記は平均値のため、求人によってばらつきがあります。単価にばらつきがあったものの上限~下限をまとめると下記のとおりです。
翻訳者:英訳5~13円/ワード、和訳4~7円/ワード
チェッカー:英訳1~2円
ポストエディター:英訳3~7円/ワード
チェッカーとポストエディターは単価ではなく時給で募集している求人もあり、時給の場合は、チェッカーで1,200~1,300円、ポストエディターで2,100~2,900円でした。
明細書1件あたりいくら稼げるのか
単価だけだと実際いくら稼げるのか良くわからない
という方のために、明細書1件分を翻訳するといくらになるのか計算してみました。
前提として、英語の明細書9,200ワード/件、日本語の明細書16,000文字/ワードとしました。
(2016年~2020年の米国特許文献、日本特許文献の平均ワード・文字数より 出典:https://transtool.japio.or.jp/work/data/mt_needs.pdf)
【表】明細書1件あたり収入(前提:英語明細書9,200ワード/件、日本語明細書16,000文字/ワード)
明細書1件あたり、翻訳者は9万円、チェッカーは2~3万円、ポストエディターは5~6万円となります。
明細書の分量は正直案件によってまちまちなので参考程度に。
月収、年収は?
月収、年収にするといくら稼げるの?
月収、年収を調査結果の単価をもとに計算しました。
翻訳を仕事にする場合、目安として1日2,000ワードの処理速度が必要になります。
月20日、処理スピード2,000ワード/日で稼働した場合(+仕事を継続受注できている場合)は、
【月収】
翻訳者:40万円/月
(単価10円/ワード×処理速度2,000ワード/日×稼働20日/月)
となります。
年収に換算すると、480万円ですね。
ただし、「1年を通して継続的に仕事を受注できれば」到達できる年収になりますね。
応募資格(未経験OK?必須スキルは?)
未経験可の求人割合は?
未経験者が応募できる求人はほとんどないような…
アメリアは、未経験でも応募可能な求人割合が他の求人サイトに比べて多く、約3割は未経験可の求人とうたっています。実際はどうなのでしょうか。
今回の調査方法では、求人が20件ヒットし、うち2件が未経験応募可の求人でした。つまり未経験可の求人は割合は、1割ですね。
今回は「フリーランス翻訳者」に絞りましたが、翻訳会社での「翻訳+翻訳管理業務」を正社員や契約社員の雇用形態で募集している求人等も含めれば未経験者かの求人割合はもっと高いです。
応募資格(必須スキル)は?
上記のとおり、9割が翻訳経験者を対象とした求人でした。
応募資格は、だいたいの求人でどの職種(翻訳者、チェッカー、ポストエディター)も同じようなものが多く、中でも代表的なもの下記に記載しました。
【応募資格】必須スキルの記載例
・特許翻訳の実務経験がある人(経験年数は3年以上のものが多い)
・特許クラウン会員の人
・CATツールが使用できる人
・1日の処理量が2,000ワード以上の人
・TOEIC900~950点以上の人
やはり、実務経験2~3年以上の求人が多く、未経験者の方にはハードルが高く感じてしまいますね。
補足ですが、アメリアではこうした状況で未経験者でもスタートラインに立てるように、「クラウン会員」という資格を設けています。
「クラウン会員」とは、経験の有無に関わらず「実際の仕事で通用するレベル」とみなされるアメリア独自の会員資格です。「クラウン会員」資格を取得すると、翻訳の実務経験がなくても経験者対象の求人に応募できるチャンスが増えます(出典:アメリアHP)。
アメリアの求人では応募条件の必須スキルに「翻訳の実務経験」または「クラウン会員」と書かれている求人が多く、この場合は、翻訳の実務経験または「クラウン会員」資格のいずれかをお持ちであれば応募が可能です。
まとめ
今回は、
・フリーランス特許翻訳者はいくら稼げる?
・特許翻訳の単価、月収、年収は?
・求人への応募資格(必須スキル)は?
・未経験でも応募できる?
といった疑問について、アメリアでの募集求人をもとにご紹介しました。
【平均単価】
翻訳者は英訳10円/ワード、和訳は6円/文字
チェッカーは英訳・和訳ともに2円/ワード・文字
ポストエディターは、英訳6円/ワード、和訳は4円/文字
【月収、年収(試算)】
翻訳者:40万円/月
(単価10円/ワード×処理速度2000ワード/日×稼働20日/月)
年収に換算すると、480万円(継続的に仕事を受注できれば)
【応募資格】
未経験可の求人割合:1割
残りの9割は、翻訳経験3年以上のものが多い
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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